100kmつづいた圏外と4900mの雪山を切り抜け、ついに雲南省のシャングリラへ!
Day 142~145:香格里拉镇(xianggelila)- 拉木格村(lamuge)- 各卡(geka)- 香格里拉(Shangri-la)
シャングリラにたどり着くまでのここ数日は、電波の通っていない圏外エリアが続いたため、デジタルな手紙を送れずにいた。またローカルに保存しておいた三日分の書き溜めた日記が不意に消えてしまったため、数々の山々を上り下りてして、さらに4900mの雪山を越えて、雲南省のシャングリラに切り抜けるまでの四日分をまとめてこの一通で振り返える。
亚丁から再び舞い戻ったホステルを再度出発し、一緒に亚丁へ裏道入門を果たした友人のYPと別れ、同じ道ながらYPは自転車に乗って先に去っていった。
ここ数日は一日いちどの助っ人が現れ、厳しい道のりを一区間ずつ運んでくれた。
一気に前進し、自転車で山道を登るYPを追い抜かし、山頂付近でトラクターの荷台から降ろしてもらい、歩いて下山していると、下り坂で加速した自転車に乗るYPにまた追い越された。
下山をしながら夕方四時前に小さな村にたどり着き、村で唯一の宿屋に宿泊したのだが、部屋に電気は通っていなく、ベットは簡易な木のフレームにマットレスなしだったが、他に選択肢はないため文句は言わず有難く寝泊まりさせてもらった。
Day 143:次の日は朝9時頃から歩行を開始し、まだまだ続く下り坂の山道をショートカットしようと試みた。ガードレールを跨ぎ、崖をそのまま下へ降りようとしたのだが、あえなく失敗…。
急斜面の崖を降りようとするのに多くの体力と精神力を浪費してしまった。
後から降りようとした崖を別の角度から見てみると、大変危険な選択だったことに気づく。止まらずに転げ落ちる石ころのようにならず、無事何事もなく元の車道に戻れてよかった。
崖を降りて引き返すので疲れてしまい、はぁはぁしながら歩いていると、二人の中年男性の旅行車に30分ほど相乗りさせてもらえて、その後は午後四時まで歩いて昨日よりは少し規模の大きい各卡という村に到着した。
またしても宿は村に一軒のみだけだったが、昨日のマットレスなしベッドよりはるかに快適なベッドでゆっくり休むことができた。
Day 144:この日は9時半から歩行開始。四川省と雲南省のボーダー間際に差し掛かり、標識がなく正確には分からないものの、途中何処かで雲南省入りを果たした。スマホの地図には載ってない小道で、相変わらず電波はなくずっと圏外。山間の舗装されていないデコボコの埃舞う砂利道を歩いていった。
お昼の12時に小さな村に差し掛かり、その途中で、車で旅する中年のおじさま二人が拾ってくれ、これが運命の分かれ道となる。
道が悪く、車に乗っているが、まるで馬に跨っているかのように揺れ、でっこボコの山道を車でも苦労して進んだ先には、今度は4900mの雪山が立ちはだかった。寒々しい雪山を越え、さらに車で夜8時までかけてようやく雲南省のシャングリラまでたどり着くことができた。
もしシャングリラまでの険しい道をすべて徒歩の自力で歩くとなると、少なくとも三日はかかり、途中で泊まれる宿はもちろんないのに加え、雪山で一晩を越すことになれば体調を崩す可能性が高い。
確かに徒歩の旅ではあるが、旅の目的は完全なる中国徒歩横断を達成することではなく、徒歩の旅を通した出会いと自分と向き合うプロセスであり、今回は旅するおじさま二人との出会いに助けられ、ついに雲南省のシャングリラまで来ることができた。
Day 145:6月9日からはじまったこの旅もいよいよ終わりが見えてきた。この間に季節は夏から冬に変わり、五つ目の最後の雲南省に突入し、北京から5ヶ月近くかけて徒歩と逆ヒッチハイクで理想郷として知られる雲南省のシャングリラまでやってきた。
ここまでの道のりの中、毎日自分と向き合いながら中国を歩き渡り、心境にも山あり谷ありで変化してきた。
出発前の当初は、「母国の中国を知り、己を発見し、まだ見ぬ広い世界に感謝する旅」にしたいと考えていた。
がしかし 、実際ここまで旅をしてきて、中国を知れば知るほど母国というよりかはいっそ外国のように感じられ、自分が本当に欲しいものは何かと己に問い続けてきたが、その前に本当に大切なものは何かという問いかけか先に来るわけで、もしかしたら欲しいものはすでに持っているかもしれないと気づくのに長い時間がかかった。
自分が中国を歩くのは、自分にしか歩めない道(人生)を歩むために必要なプロセスであり、中国徒歩横断達成が真の目的ではない。
シャングリラに到着した翌日となる今日は特に行き先も決めず、シャングリラの街中をぶらぶら歩いた。まずは街の高い場所にある大佛寺まで登って街を一望し、それから街中で見つけたおしゃれで落ち着いた雰囲気の"Namaste Cafe"というカフェで、ランチがてらにベジのサンドイッチとチベットビールを飲みながらまったりした。
初のチベット・ラサのビールがカフェにあって飲んでみた。ラサの高原地帯の泉水でつくられ、飲みやすく、メキシカンビールに近い感じ。
はじめての新しい知らない街に着くと、まずは自分の足で思いのまま散歩するのが楽しく、旅行者にとって有名な観光地どころにはそれ程興味はない。
理想郷として知られる、シャングリラ。
理想郷とは、辞書にはこう記されている。
理想的な想像上の世界。ユートピア。
自分の理想郷はまだ己の中にあり、自分の理想を現実に作り上げていかないと、ただ探しているだけでは自分が追い求める真の理想郷は見つからないものなのかもしれない。
なぜなら、この世界は自分以外の誰かが作り上げた世界なのだから。
"Not only to live your life, but build one."
己の人生を生きるだけではなく、作り上げろ。
しうんより